子どもを対象としたカウンセリング(心理療法)では、遊戯療法(プレイセラピー)という方法を用います。

 この方法では面接時間の間にカウンセラーと子どもが一緒に遊ぶのですが、ただ単に遊んでいるのではありません。子どもが行う遊びの中に子どもの様々な思いや感情が表現されますので、そのような感情や思いをカウンセラーは理解し、受け止め、そして、時にそのことについて話し合おうと心がけます。

 このような交流がうまく展開すると、子どもには、これまであまり表現できなかった思いや自分でも気づいていなかった感情が誰かに受け止められたと体験されますし、結果的に子どもが抱えている不安感が和らいだり、自尊心が高まったりといった効果が期待できます。

 このように書くと「子どもの気持ちを受け止めたり、話し合ったりするのは親(保護者)ではだめなのか?」という疑問を持たれるかもしれません。しかし、子どもには個性があります。不安をあまり感じずに小さなことはあまり気にならない子どももいれば、生まれた時から繊細で不安が高いため、「他者から受け止められる」という経験をより多く必要としている子どもも存在します。あるいは、何か運悪くトラウマ(心の傷)になるような経験に出会ってしまった結果、「他者から理解される」経験が特別に必要となる子どももいます。

 そのような子どもの場合、親だけではなく、専門家(カウンセラー)とのかかわりもまた重要になると私は考えています。(もちろん、親(保護者)とのかかわりが重要でないと言っているのではありません。子どもが安心して成長できるためには、親(保護者)との関係がもっとも重要です。それは間違いありません。)なぜなら、親は、子どもの思いを受け止める役割だけでなく、現実的なケア(ご飯を食べさせるとか)などの多くの役割をこなさなければならないのに対して、カウンセラーは理解し、受け止め、話し合うという役割だけに専念できるという立場にあるからです。

 遊戯療法(プレイセラピー)は子どもが本来持っている力を十分に発揮できるように促す方法なので、子どもの発達や成長を安全に促すことができますし、その結果、抱えている症状が治まったり、問題行動が消失することにつながると考えています。